病院には死神がよく現ると聞く。大抵は黒い影や、靄のような形で死期の近い患者さんのベッドの足元や枕元に姿を現すのを医療従事者や、他の患者さんが目にするという。 今回の体験談を寄せてくれた女性の場合は少し様子が違うようだ。三年前のこと、母親が北九州市の総合病院の六人部屋に入院していたそうだが、ある日息子と二人で老齢の母親を見舞いに行くと、室内には母親のほかに二人やはり高齢のお婆さんが二人入院していた。一人はおしゃべり好き、もう一人は静かに眠っていた。 するとおしゃべり好きのお婆さんが、寝ているお婆さんのベッドの上の天井の隅を指差し「黒い虫がたくさん出てくるのは何かしら」と言い出した。無論、虫など湧いていないのに……。