
とにかく安い部屋を。その条件だけで初めての一人暮らしに望んだ体験者が案内されたのは築数十年の五階建てのアパートだった。
旧建築法の時に建てられていたから、最上階まで階段でしか上がれないボロボロの建物不だったが、部屋を見るとリフォーム済みでユニットバスに水洗トイレ。不満なく暮らし始めたのだが、しばらくたったある晩、何気なく視界に飛び込んできた時計の針が8時を指そうというとき、廊下の奥からチンというエレベーターの到着音が聞こえ、小さな子供達の嬌声と駆け回る足音を聞いた。
実はないと思い込んでいたエレベーターが一基だけ存在していた。
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